『何が出るかわからない、伊勢の昔語り~歴史家のターゲットは古代から江戸時代まで トークバトル パート3』@ロカンダボーノ

2017年09月16日(土) 『何が出るかわからない、伊勢の昔語り~歴史家のターゲットは古代から江戸時代まで トークバトル パート3』@ロカンダボーノ (車、徒歩))

『何が出るかわからない、伊勢の昔語り~歴史家のターゲットは古代から江戸時代までのトークバトル』は3回目となったが、ここで大きな変化があったためまずはその内容を紹介しよう。
パート2までは覆面歴史家さんと千枝大志さんがトークバトルを展開していたが、ついに覆面歴史家さんが覆面を脱ぎ捨てた。

会場はいままでと同じく伊勢市河崎にあるロカンダボーノ。

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

 

今回より新たに司会者が設定され千枝さんの大学時代同期である奥田さんが「トークバトル パート3」の開始を宣言した。

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

 

口火を切ったのは元覆面歴史家さんで出演されたNHKの番組「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!【藤のつく名字】」を紹介した。その放送日は集中豪雨の臨時ニュースで番組の開始が遅れた。そのおかげで最高視聴率を叩き出したのではないか。さらに再放送は国会中継と台風情報で2度も延期され9月19日(火)午前0:10~午前0:55に放送されるとのこと。(本日も台風18号の影響で天気は荒れていた。)
さらに、近日(9月20日)発売が予定されている著書「斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史 (中公新書 2452) 」が紹介された。これだけ情報が開示されれば・・・覆面を脱いだ歴史家は三重県立斎宮歴史博物館の榎村寛之さんであることは明白だ。

続いてマイクを握った千枝さんは先日、中日新聞伊勢志摩版に掲載されたインタビュー記事を紹介した。この記事が掲載された新聞の発行日について思い出せないでいると榎村さんが手にしたタブレットですかさず検索して「9月4日(金)です」と紹介していた。榎村さんにはご自身の頭脳だけでなくタブレットまでも装備しての参戦となった。

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

 

話を戻すと千枝さんのインタビュー記事の要点は「郷土資料館の再建を」だった。(このことは私も閉館時から思っていること。)

【参考】

 

今回のトークの詳細については、「バトルトーク パート3 戦記」が発行されることを期待し、ここでは発言者を特定せず(一部は除く)私が気になった話題をピックアップしてまとめた。そのためほとんどは主語を特定していない。(想像してください。記録ではなく、私的メモとして掲載します。)

【—】
警察の捜査では現場百回と言われる。最近では1000〜1800年前の古代を研究する分野においても現場を歩くことが重要となっている。以前なら文献をまとめた10冊ほどの本を手元に置けばどこにいても研究できたのだったが戦後にその状況が一変した。その契機は高度経済成長以降の発掘調査にて地方の役場や港などの跡地より文字が描かれた木簡や土器が出土されたことにある。現場を訪れればそこに記された情報の裏付けがとれたり、異なる地域でもそっくりな地形であることに気づいたりと現場に立って初めてわかることがある。つまり現場に立たなければそれらに気づくことはできない。
これは古代史だけでなくあらゆる時代に歴史にも当てはまることだろう。現場を歩けば古文書の平面的な世界から抜けだしてさまざまに想像力がかきたてられる。つまり歴史学の世界でも現場は重要な研究の場となっている。

【—】
昔の絵図は現在の地図と比べると稚拙に思えるが実はそれらは案内図として優秀なものとなっている。
現代の地図は上を北にして縮尺も正確になっているが観光マップとしては使い難い。小学生の頃に描いた地図を思い起こせば、この道は狭い・広い、ここにお店があるなど利用者の視点が満載となる。このような地図は江戸時代以前の地図であり利用者の視点が満載となっている。つまり発行者は利用者のニーズを掴んでいるのだ。伊勢参詣曼荼羅を例に上げると方向や位置など現在では滅茶苦茶に思える配置だが、鎌倉時代にはとても使いやすいものだったのだろう。方向や距離を明確に特定できず親切な(?、おせっかいな)案内板などはない時代には特徴的な目標物を示すことがガイドマップの重要な役割だったと。当時のメディアはニーズに合わせて情報発信していたことがわかる。

このように現代の感覚で昔のものを見てしまうと「昔のものはわからない。」「昔の人はアホやった。」と思えてしまうが、それは危険であり、過去のものを大切にしてそこからのひも解きが必要となる。

それだからこそ、千枝さんが進めている一次資料を現場へ応用している歴史応用学も重要となる。町に出れば通常なら手にできない情報が飛び込んでくることもあり、現地調査で紙袋のなかからとても貴重な古伊万里の器がでてきたこともあった。

【–】
ブラッチェiseミニツアー河崎ブラ夢中散歩(Season1 最終章)でも紹介された「ガイドブックとしての伊勢参宮按内記とマップである追考 両宮別宮摂社参詣要路」の話。つまりガイドブックとガイドマップを別々の売る商法が実践されていた。ビジネス手腕があったのだろう。

【参考】

 

この際、提示された伊勢参宮按内記を手にした榎村さんはバトルもそぞろにこの古文書に魅入っていた。そして、「そうか!」新たな発見を口にした。

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

 

千枝さんが意図したこととは全く別の所に注目しご自身が以前から疑問に思っていたことが解決したと。これもトークバトルの醍醐味だろう。それは現在伊勢神宮の両正宮にある四丈殿の位置にあった斎王候殿(斎王の控え室)が伊勢参詣曼荼羅には描かれていない理由に迫るものだった。

 

追考 両宮別宮摂社参詣要路は廃絶となった伊勢神宮の摂社の復活を検討している時期のものである。
伊勢参宮按内記とともに発行されたのが宝永4年であり2年前の宝永2年にはおかげまいりが流行し、この頃には鎌倉時代にはじまり一時期下火になっていた伊勢神道を盛り上げるため出口延佳、延経親子らが活躍していた。これらのガイドブック・マップはおかげまいり、伊勢神道、出版の要素がリンクして生まれた。

【—】
博物館の存在の重要性について
ものが無ければ本を読めばいいが本を読めばものを見なくてもいい訳ではない。
博物館はものを見せるところであり、3つの重要な役割がある。
1.ものの価値を研究する(伝えるために研究、終わりなし)
2.ものの価値をわかりやすく伝える(伝える工夫)
3.ものの価値を保存する(ものの性質を知る)

例えば着色されているものは経時劣化で色が抜ける。白い紙は石英の粉が入っているためボロボロになりやすい。和紙は水には強いが虫には弱い。今は虫と人間とが知恵比べの時代である。20年前までは可能であった燻蒸作業もその薬剤がオゾン層を破壊するとの理由から使用できなくなった。そのため駆除ではなく、ものを虫からいかに剥離するかが重要な対応となっている。

現在展開されているまちかど博物館はものを見せるためには有効であるが特に保存の点では機能していないところがほとんどだ。博物館は流出しそうなものをつなぎとめ将来にみんなが研究できる素材を買い保存する役目も負っている。

【—】
伊勢市では郷土資料館が閉館されてからほとんどの資料が二見にある大学校跡へ追いやられたと聞く。海岸に近く津波や潮風の影響が心配である。紙類をはじめ駕籠や被服類はダメージが大きいのではないか。博物館としての役割が機能していない管理状態には早急の対応が必要だ。
現況では自宅で保管していた古文書等を伊勢市に寄付したいとの声も上がらないだろう。
こんなことが続けば伊勢市の歴史的資源は刻々と消え去ってしまうのだ。

とにかく展示スペースは少なくても、紙や金属の劣化を抑えることができる機能を有した大きな収蔵スペースが必要である。その時には役立たなくても10年後、いや数十年後、それ以降に役立つものもあるのだから。

【—】
「持っている方が重要性に気づかない。わからない人が聞くところはあるのか」「価値に気づかないが持っている人と研究者がつながるべき?」の質問に対して文化財パトロールや文化財保護員などの制度はあるが有効に機能している地自体は少ないのでは? それらの価値に気づくことができるように育てていく文化財の(自治体に依存しない)町医者が必要である。(伊勢には文化財のやぶ医者が多い。)
生活様式の変化によりもっとも怖いことは蔵が壊されること。収蔵品は捨てられるか、古美術業者に箱買される。業者にも価値を見いだされなければ捨てられるだけだ。しかし家系図のようにストーリーのあるものは残される。
このような話題をアピールしたくてもTVではあまり取り上げてくれない。

【—】
「地域資源を観光にいかすためには?」の質問に対して、観光に関わる人が本当にその地域を理解していることが重要となる。特に地域のお年寄りにじっくりと話を聞き、日記などの記録を見せてもらうと伝聞だったものに深みが加わる。このことを繰り返せばストーリーが生まれ、リピーターを生むことも可能となる。最近は柳田國男の遠野物語が注目されている。いかにネタを求め、その根拠やさらなるネタを追い求めることができるのか!
また、まち歩き専用ファイルを試作するなど学芸員でも観光に寄与できることを勉強することも重要で、一年間ブラッチェiseなるまち歩きを続けて観光との協働が必要であることを実感した。

【—】
最後に、榎村さんは次の話題を紹介し

【参考】

伊勢の御師の情報発信能力の凄さを示した。まだまだありそうだ!

また、千枝さんは表面的な伊勢ガイドブックは多数存在するがもっと伊勢を知ろうとしてもその道先を案内してくれるガイドブックは存在しないと主張。(京都には立派なものがある・・・)

 

以上で「トークバトル パート3」は終了となった。

榎村さん、千枝さん、ありがとうごさいました。
また、ご来場の皆さん、楽しんでいただけたでしょうか? 十分以上ですよね。(スタッフのひとりとして勝手に満足しています。)また、スタッフのみなさんお疲れ様でした。

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

 

今回は(も)終わってみればバトルにはなっていなかった。しかしとても濃い内容。
私の文章ではまったく伝えきれていないし、この中には私の意見なども組み込まれているかも知れない。

とにかく、バトルは目の前で体感しながら参加するものなので、次回はぜひともご参加を!

出演者のおふたりにはパート4の開催の確約もいただけた。

さらにトークバトルの後に実施された懇親会でも熱のこもった議論が繰り広げられていた。

トークバトル Part3の懇親会@ロカンダボーノ

トークバトル Part3の懇親会@ロカンダボーノ

 

 

楽しい懇親会もお開きになると昼から続いた怒涛のブラッチェiseミニツアー、トークバトルを思い出しながら帰途に着いた。

トークバトル Part3@ロカンダボーノを終えて

トークバトル Part3@ロカンダボーノを終えて

 

最後には、トークバトル開催前、会場の設営を終えてから司会リハーサルに臨む奥田さんの勇姿。次回もよろしく!

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

トークバトル Part3@ロカンダボーノ

 

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