2017年09月16日(土) ブラッチェiseミニツアー河崎ブラ夢中散歩(Season1 最終章) (車、徒歩)
今まで何度もお伝えしてきた、中京大学文学部学芸員の千枝大志さんが実施するブラッチェiseミニツアーは、今回でSeason1の最終章を迎えた。それはこれまでのブラッチェiseの実施により歴史応用学の論文をまとめるデータが集まり当初の目的を果たし、さらには千枝さんの主研究テーマである中近世経済の研究について注力するためとのことだ。
【参考】 ブラッチェiseの記録
なお、今回のツアーは次の予定だったが、なんと台風18号の影響で秋雨前線が刺激され朝から雨が降り続いていた。そのため、館内でのレクチャーがほとんどとなったが興味深い展開となった。
ブラッチェiseミニツアーパイロット版 河崎界隈町歩きツアー
今回のサブタイトルは
~河崎界隈ブラブラ夢中散策編 完全版~
@主催 ブラッチェise主宰 千枝大志
@開催日時;2017年9月16日(土)14:00より17:00頃 ※小雨決行
@集合場所;伊勢河崎商人館前
@主なルート;河崎南町庚申堂周辺・榎本三右衛門邸・富田常右衛門邸・岡村長四郎邸・辻村藤兵衛邸・和具屋忠兵衛邸・小川三左衛門邸・喜楽湯跡・惣門跡・河崎惣堀跡・村田仙右衛門邸など ※移動は今回も徒歩です。なお、ルートはあくまでも予定です。ブラタモリ伊勢編やゴリ夢中伊勢編のロケ地巡りツアー的な意味合いもあります。
@定員;先着20名
早めに集合場所である伊勢河崎商人館を訪れると参加者はまだ2〜3人だった。開始時刻が迫ってくるとひとり、ふたりと集まり荒天ではあったものの最終的には十数名の参加となった。
参加者には本日の資料とそれを納めたファイルが配られた。このファイルは山田のまち歩き専用ファイルとして千枝さんが作成したもので自らが所有する度會河内明細圖の一部が片面に印刷されていた。裏面はクリアな状態となっていて、持ち歩く資料が見易く水濡れに強いなどまち歩き小道具として考えられていた。つまり記念品ではなく普段使いできる実用品となっている(このクリアファイルの詳細については使用レポートとして別途報告することにする)。
千枝さんから本日のツアーの概要(雨のため事前の説明に時間を取る・・・)が説明されると続いては伊勢河崎商人館の事務局長である西城さんから商人館概要が説明された。(当館を訪れると館内を案内していただけいるのでぜひともどうぞ。ここではネタバレにならないように説明は省略)
【参考】 伊勢河崎商人館のホームページ
伊勢河崎商人館は元酒問屋 小川酒店を改修して運営が開始された施設であり、千枝さんは学生の頃にこちらの調査に関わりそれ以降現在に至るまで河崎さらには伊勢と深く関わっている。その調査は伊勢河崎商人館が開始される前からであり、今回はその頃の話題も含め、千枝さんがガイドとなって当館内を巡った。
館内へ入る前、離れにある商人倶楽部なる建物に希望者が足を運んだ。
何ともレトロな取手の扉を出ると
中庭のの先にこのようなスペースが確保されていた。
通路の途中にこんなガラスも。
商人倶楽部の見学を終えるとここからは全員が商人館の中へ。
二階への急な階段を上ると右手にある座敷へ入った。
二階は使用人が住んでいた部屋で鴨居とともに天井がかなり低い。
千枝さんは学生時代に河崎とかかわり始めた頃、調査のためにガードマンと電話番も兼ねてこの部屋に半年間住んでいた。その当時は照明がなかったため真っ暗ななかで、懐中電灯を頼りに資料を探したり調べたりと大変だったそうだ。
さらに建物の建築年代を特定するため、奥の蔵に懐中電灯を片手に梯子を上って棟札を確認した。建築家はデザインで時代を特定するが千枝さん自身は資料にその解を求めた。
その他、Sサイダーの製造・サイダーとラムネの違いや東海地区最初の白鹿販売店などについて話題の後、千枝さんが所有する古文書や絵図が紹介され
参加者がは前のめりになっていった。
これは神都加婦志貴(かぶしき)でその中には暦師・陰陽師・御塩殿内人・大湊八幡宮社家・三座能大夫株などの興味深い職種が示されていた。
さらに古文書の展開は続き、
参加者の多くがさらに身を乗り出して見入ったのは・・・
それぞれが異なる場所をカメラに納めるその絵図の正体は
それは細見 伊勢國繪圖で伊勢国の全域が記されていた。各人は自身に関係する地域に注目していたのだった。
続いてはクリアファイルに使用された度會河内明細圖について、明治2年に発行されたこの地図は廃仏毀釈の影響で寺が描かれていない。仏教色が完全に消されている。また御屋敷は江戸のもので明治にはないのにそのまま残されている。さらに地名の変化が反映されていない場所もあるなどかなり大雑把な箇所がある。
そして今回、千枝さんがもっとも嬉々として紹介した内容がこちらだ。千枝さんがとてもお世話になっている医師 飯田良樹さんから情報を得た追考 両宮別宮摂社参詣要路なる絵図であるが、これだけを見ていると伊勢神宮の各宮社巡拝のためのガイドマップである。
しかし伊勢参宮按内記と合わせて考えると興味深い事実が浮かび上がった。伊勢参宮按内記はいわゆる伊勢神宮の各宮社巡拝ガイドブックだがなぜか絵が少ない。
ここで、ガイドブックとしての伊勢参宮按内記とマップである追考 両宮別宮摂社参詣要路を合わせて確認すると発行元はともに講古堂 藤原長兵衛(勢州山田一志)でありこれらはお互いを補間するように作られていた。つまり一冊で提供できる情報をあえて分割して販売する商法がここに展開されていたのだった。しかも同じ時期に発行されている。千枝さんはなぜに伊勢参宮按内記には絵が少ないのか、ずっと考えていた疑問がこのマップを目にして一気に解決したそうだ。
ほかにもガイドブックに関連する伊勢二見絵図なども発行されていた。 商才があったのだろうか?
かなり盛り上がった二階座敷でのレクチャーを終えると階下へ。
こちらは茶室。
続いては内蔵にて白鹿販売、注連縄、瓦などに関する展示。
内蔵から外へと続く通路へ戻ってくると
いきなりこんな板が飛び出した。これは簡易的な渡り板で出し入れ可能なのだ。ただし、この板を使わずにこの通路をひょいと飛び越えられるようになって初めて嫁として認められたなどの話も・・・。
母屋を後にすると
続いては外の蔵(今は河崎まちなみ館)へ移動した
こちらの展示内容な興味深い内容であるが、千枝さんたちが調査し展示した状態がいまも続いているそうだ。
それにしても私が気になったのは展示ケースの上部が抜けていて気密性がないこと。
古文書がかなり虫に喰われていた。河邊七種神社で古文書を整理している立場としてはここに展示されている古文書は数年後には読めなくなる部分も多くなるのではと心配になった。ここでこそ古文書のデジタルアーカイブ化が必要だろう。
ツアーの開始からすでに2時間半が経過した。残り予定時間は30分。ここからは河崎商人館を後にすると
伊勢まちかど博物館にもなっているせとものや 和具屋さんへ向かった。
和具屋さんではかつては使われていたトロッコ用のレールが敷かれた入口から
建物の奥へ。(入館料は100円) 振り返ってパチリ。
長く伸びたレールの左右には多数の陶磁器が置かれ、さらにはそれ以外にも代々伝わる多数の見ものが・・・。
こちらは二階。
和具屋さんは時間があれば一日でも楽しめそうな場所だ。
そろそろタイムリミットが近づいてきたので、和具屋さんを後にすると河崎蔵へ移動した。
千枝さんがこの蔵に残された過去の商売の痕跡をクイズ形式で紹介しながら本ツアーは終了となった。
千枝さん、伊勢河崎商人館の西城さん、西山さん、和具屋さん、ありがとうございました。そして参加者された皆さん、お疲れ様でした。
本ツアーでブラッチェiseミニツアー Season1は終了となりました。千枝さんお疲れ様した。また、さまざまな視点を与えていただきありがとうございました。
パワーアップしたSeason2が開始される日を期待しつつ・・・
小川酒店・・・懐かしいです!!!
私も小さい頃、河崎3丁目(小川酒店の対岸あたり)
で酒卸店をやっていた
父の使いで、足りなくなった、販売用の
酒を、小川さんへ借りに行った記憶があります。
そのころは、小川さんの母屋の・・道路を挟んで
向かいのあたりへ、三河方面からの、商船が
横付けして、小川さんの蔵へ、荷を
搬入していました。それで、勢田川の汐の満ち引き
を計って、勢田川へ逗留して、満ち潮と同時に
海の方へ引き上げていきました・・・。
懐かしい思い出です・・・(^^)
たかっち
たかっちさん
おはようございます。
当時の様子をお伝えいただきありがとうございます。
> それで、勢田川の汐の満ち引き
> を計って、勢田川へ逗留して、満ち潮と同時に
> 海の方へ引き上げていきました・・・。
やはり当時から満ち引きが船の運航に影響を与えていたことがよくわかります。
今でも勢田川沿いをウォーキングしているとその満ち引きを体感できます。
当時から「風待ち」ではなく「潮待ち」だったのですね。とても興味深いです。
いつもありがとうございます。