荒塩の焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)2014 その1

2014年08月01日(金) 荒塩の焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)2014 – その1 (車)

神宮での祭典におけるお供え、および修祓の清めに使用される御塩は自給自足だ。御塩づくりは、御塩浜での採鹹作業(入浜式塩田で鹹水[塩分濃度の高い海水]を採取する作業)を終え、第二段階へと移された。

【参考】 御塩浜での採鹹作業について

御塩浜での採鹹作業でつくられた鹹水は伊勢市二見町荘、御塩殿神社々域内にある御塩汲入所へ運び込まれ、その隣に建つ御塩焼所の大きな平釜で焚き上げられるのを待っていた。御塩汲入所に保管してある鹹水が御塩焼所に準備された平釜へ注がれると薪を使って焚き上げられ、程よく水分が抜けると苦汁成分を残した荒塩がつくられる。この荒塩の焚き上げ作業は採鹹作業に携わった地元の奉仕者の手により8月1日〜2日、一昼夜をかけて繰り返し行なわれた。

御塩汲入所、御塩焼所については、神宮司庁発行の小冊子「神宮広報シリーズ(三) 神宮の御塩」によると次の通りである。

御塩汲入所
御塩殿のうしろ、浜の近くに御塩汲入所があり、御塩焼所のちょうど東斜めの位置にならんでたっています。
ここは二見町大字荘で、東方に海水浴場、旅館街、立石崎が一望に見わたされ、遥かかなたには神前岬、飛島八島、答志島がのぞまれます。
また、北は一面に伊勢の海がひろがり、知多半島が淡く横たわり、西には大湊の突堤が長く海中に出ているのが見られる景勝の地です。
御塩汲入所は、松林の中に地際から直ちに萱屋根がふかれるという、建築史上、貴重な様式である「天地根元造り」と呼ばれる構造を現在に留めています。
御塩汲入所は、2.8m×5mの広さで、中には144リットル入りの大きな壺が12個並べられており、この内の11個の壺に、御塩浜で採鹹した塩水を貯水致します。
残りの一個は空にしておいて釜に運ぶ前に砂を入れた濾過桶を通して清浄な水を得るために使用します。

御塩焼所
御塩汲入所の斜に並んで御塩焼所と呼ばれる釜屋があります。
建築様式は御塩汲入所と同じ「天地根元造り」です。
6.6m×9.09mの広さで、中央にかまどをすえ、その周りに薪置場・釜置場・いだし場があり、煙道も煙突もありません。
中央に直径2m高さ1mの円形の”くど”と呼ばれる竃があります。
“くど”は粘土できずかれ、焚口はは0.5m角になっています。
“くど”の上にのせられる釜は、鉄の平釜で口径2m、深さ約0.15m、厚さは口辺で約0.08m、中央で約0.05m、容量は約7斗(126リットル)にも及ぶ大きなもので、この釜をすえるのには三人がかりで行ないます。
8月上旬、荒塩が作られます。釜に約108リットルの鹹水が入れられ、二名づつ一昼夜交替で釜を焚きます。
2〜3日で3石(540リットル)から4石(720リットル)の荒塩が得られます。
17・18度の鹹水ならば一釜を3時間半、12・13度で4時間半焚き、13度の鹹水では8升(14.4リットル)15度では1斗三升(23.4リットル)20度では2斗2升(39.6リットル)の塩ができます。
この作業は煙道がないため、煙がもうもうとたちこめ、その中で塩のとり出し期を見つめながら、薪を焚かなければならないので、非常に困難をともなう作業です。
できた塩は土色にくすんだ全くの荒塩で、”いだし”場にとり出され、俵につめられます。俵は2斗(36リットル)入、麦藁と稲藁を半々にあんだもので麦藁をつたって苦汁(にがり)がよく流れるようにつくられています。
俵装された荒塩は御塩殿裏の御塩倉に納められます。倉の床は竹の簀がしかれ、その下土は内側に向かって傾けられ、中央にかめが埋められて苦汁がたまるようになっています。

(神宮広報シリーズ(三) 神宮の御塩 より引用)

 

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業の初日、仕事を終えて空が暗くなった頃に御塩殿神社を訪れた。車のライトを借りないと何も撮影できないほどの暗さになっていた。

御塩殿神社

御塩殿神社

 

鳥居をくぐり、御塩殿神社の参道を進むとそこは闇の世界。歩き慣れているので照明は不要だが、初めての方は懐中電灯などが必要だ。

御塩殿神社

御塩殿神社

 

参道を進み、御塩殿前の鳥居前でパチリ。

荒塩焚き上げ作業の日、御塩殿の空(御塩殿神社)

荒塩焚き上げ作業の日、御塩殿の空(御塩殿神社)

 

荒塩の焚き上げ作業を拝観する前に御塩殿神社にお参りした。

荒塩焚き上げ作業の日、御塩殿神社

荒塩焚き上げ作業の日、御塩殿神社

 

暗闇のなか御塩殿の前、斎舎の左側を通り過ぎると御塩殿神社の裏手へと回り込んだ。その先では二ヶ所が明るかった。左奥が御塩焼所で、手前が御塩汲入所。

荒塩の焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)

荒塩の焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)

 

御塩汲入所では鹹水を保管している壺の蓋を開けて何かを確認している最中だった。

荒塩焚き上げ作業の日、御塩汲入所(御塩殿神社)

荒塩焚き上げ作業の日、御塩汲入所(御塩殿神社)

 

荒塩の焚き上げ作業の時だけ開放されている扉を進むと

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

御塩焼所の中央にあるくどに据えられた平釜では、アクを取る作業が続けられていた。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

夜間に訪れるメリットは御塩焼所の内部を詳細に拝見できることだ。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

左奥には薪が積み上げられた「薪置場」、左側には焚き上げた荒塩を引き上げる場所「いだし場」がある。前回の焚き上げで引き上げられた荒塩が寝かされていた。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

残された水分と苦汁成分をできる限り取り除くためだろう、木のへらを縦に使って荒塩を切るように・・・。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

煙突がないこの御塩焼所はくどで燃やされる薪の熱気が充満している。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

この熱が・・・。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

なお、作業を拝観している者の身には熱気以上の大敵がいた。蚊の大群だ。私は数えることができないほど刺された。痒さに耐えながらの拝観となった。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

しばらくアク取り作業が続き、焚き上がりまで時間が掛かりそうだった。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

一旦、御塩焼所を後にすると

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

荒塩焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)

荒塩焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)

 

御塩殿神社の二見浦側にある出入口へと向かった。この扉は通常閉ざされているが、奉仕者の車が出入りできるように今は扉が開けられていた。ここでも通りかかった車のライトを借りてパチリ。

御塩殿神社、二見浦側の出入口へ(荒塩焚き上げ作業の日)

御塩殿神社、二見浦側の出入口へ(荒塩焚き上げ作業の日)

 

二見浦の海岸に打ち寄せる波の音は激しかった。ほとんど見えないが闇の海をパチリ。

御塩殿神社、二見浦側の出入口から望む二見浦(荒塩焚き上げ作業の日)

御塩殿神社、二見浦側の出入口から望む二見浦(荒塩焚き上げ作業の日)

 

波音を聴きながらしばし自然を楽しんだ後、御塩汲入所へ戻ると

荒塩焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)

荒塩焚き上げ作業(御塩焼所、御塩汲入所)

 

御塩汲入所をパチリ。特に変化は無さそうだった。

荒塩焚き上げ作業の日、御塩汲入所(御塩殿神社)

荒塩焚き上げ作業の日、御塩汲入所(御塩殿神社)

 

一方、御塩焼所では手にする道具が変わっていた。金属のへら?、結晶化し始めた塩が平釜の底で焦げつかないように・・。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

先ほど使っていたアク取り用の道具は柱に掛けられていた。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

荒塩の完成まではしばらく時間が掛かりそうだったので今夜は引き上げることにした。

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

御塩焼所での荒塩焚き上げ作業(御塩殿神社)

 

なお、いだし場に広げられている荒塩を俵に詰める作業、平釜で焚き上げられた荒塩をいだし場へ引き上げる作業については、以前の記録をご参考に。

【参考】

 

少し、消化不良であったが、蚊の大群による攻撃と予定時刻満了、2つの理由で御塩殿神社を後にすることとなった。

荒塩焚き上げ作業の夜(御塩殿神社)

荒塩焚き上げ作業の夜(御塩殿神社)

 

この二日間で荒塩は完成する。しかし、御塩づくりはこれで完成ではない。10月上旬、御塩殿での焼き固め作業により堅塩として御塩は完成し、神宮の神嘗祭にて初めて使用される。

 

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