2017年05月27日(土) 高潤生 個展「平安是福」 印風画・かな篆刻・書(伊勢和紙ギャラリー) (車、徒歩)
伊勢和紙ギャラリーさんから個展の案内状をいただいた。今回は
高 潤生 個展「平安是福」印風画・かな篆刻・書
伊勢和紙ギャラリーで2年に1回開催を続けてきた書家・篆刻家の高潤生さんの個展です。
優れた書・篆刻作品であるばかりでなく文字アートとして楽しく親しみやすく美しく表現され、多くの古典典籍から取り出した素材は作者の現代社会へのメッセージにもなっています。多くの皆様のご来場をお待ちいたしております。日時: 2017年5月27日(土)~6月25日(日) 9:30~16:30
休館日 6月4日(日)・11日(日)・18日(日)
場所: 伊勢和紙ギャラリー (大豐和紙工業株式会社 内)作者によるギャラリートーク:
6月10日(土) 13:00と15:00よりの2回(予約の方のみご入場)
篆刻体験会:
6月3日(土)・24日(土) 13:00~16:00 (材料費500円)作者 高潤生 氏 の在廊予定:
5月27日(土)・28日(日)・6月3日(土)・10日(土)・24日(土)・25日(日)
ギャラリートークに参加するのがベストであるがすでに予定が入っていたので、会期初日に訪れることにした。伊勢和紙館付近にある駐車場から真っ直ぐに敷地の奥へ進むと伊勢和紙ギャラリーの玄関へたどり着く。
ポスターで個展の開催を確認するとギャラリーの引き戸をガラガラガラ。
(今回も作者である高潤生さんに撮影の許可をいただいての写真掲載である。なお「書はどれだけズームで撮影しても構わないが、印風画などコンピュータに取り込んでから印刷したものは遠巻きでの撮影にて」とのこと。書の複製は難しいが、画像データは複製される可能性もあるからだろうか。)
芳名帳に記名してから二階へと進むと(なお一階にも展示あり)メインギャラリーの正面にはカラフルな印風画が陣取っていた。
展示されている作品番号に従うと、メインギャラリーに入って右側は#1で、左回りだ。最初に掲示されていたのはこちら。今回のテーマである「平安是福」」についての解説だった。
高 潤生 個展「平安是福」
幸せとは何だろうか、という問いに、おそらくひとによってその答えは異なるでしょう。
殷代の甲骨文字の「福」(作品No.2)は、酒が入った樽を高々と両手で持ち上げて神にささげる形です。穀物が製酒できるほど豊作に恵まれることは、三千年前の黄河流域の古代人の幸せへの憧れでしょう。一方、雲南省の納西族は、いまだに使用されている象形的なトンパ文字の中で、家で夫婦仲良く、しかも穀物の蓄えがいっぱいできることが幸せの象徴だ、と記しています(作品No.4)。
一日三食、穏やかに生活が送れることは、どの時代どの民族にとっても何よりも幸せでしょう。しかし、「人に悲歓離合あり、月に陰晴圓缺あり」(作品No.22)が示すとおり、人生の道のりはなかなか平穏なものばかりではないのも現実でしょう。
作者は甲骨文字をはじめとする各時代の文字を素材とし、四季の美しいアートシーン、印風画・かな篆刻・書などを通して表現する試みをしました。
「光陰を刻む」「天地相合」「心の浄土」「養怡 -なごむ心を養う-」につづいて5回目となる伊勢和紙ギャラリーでの高潤生個展「平安是福」を、どうぞゆっくりご高覧下さい。皆様がひと時でも心のやすらぎを感じていだたければ幸甚です。
高 潤生
伊勢和紙ギャラリー
こんなところにも手が込んでいる。
そして、#1は今回のテーマである
「平安是福」。この用紙にはやけにシワが入っていたので気になって一覧表で確認すると、この紙は伊勢和紙ではなく、土佐和紙だった。いきなり先制パンチをくらったような気分となった。まずはこれでいきなり高さんの世界に惹き込まれた。
しばらくすると高潤生さんが登場し、親しい方々にメインギャラリーの解説を始められた。私はこれ幸いと一緒になってその話を伺っていた。まるでギャラリートークに参加しているのだと錯覚するほどの時間だった。いやあれはプチギャラリートークだ。ただただ作品を鑑賞するだけもいいのだが、メイキングにも絡む高さんの語りは作品の奥深さを一歩も二歩も踏み込んで楽しませてくれる。ワクワクしてしまうのだ。
作品を横並びに眺めれば一目瞭然なのだが、高さんが繰り出す書体や表現方法はさまざまで、それらは枠にはめられず、時にはコラボしている。#9はトンパ文字と漢字、さらには背景に点々・・・・ さてこれらの点々は何だろう。プチギャラリートークのおかげで理解できた。
また、会場の一画にはお祝いのこだわりの花が飾られていた。
こちら(#9)も私が好きな作品のひとつだ。屋根と机と器。これで「寧」となるその理由を考えてみよう。
それにしても様々な作品が展開されていて、まるでグループ展を鑑賞しているような錯覚に落ちいってしまう。
また、現地を訪れれば、書の原典の解説を示した資料が用意されている。それらを読むと眺めていただけの文字が意味を持ってお近づきになれた感覚になる。
そして、メインギャラリーの最後は#13、甲骨文字、古代中国にはサイがいた?
メインギャラリーの締めくくりはこちら。
高潤生/こう じゅんせい(号 風魂)
印風画作家 書道篆刻家/皇學館大学講師第一回全国書法篆刻展、黒龍江省美術館十人展、鄧散木芸術館展など多数入選、入賞。
ハルビン師範大学書道専任講師。中国書法家協会会員、黒龍江省青年書法美術家協会理事、黒龍印社理事、『青少年書法新聞』篆刻選評委員等を歴任。
1988年より芸術拠点を日本に移し、個展を中心に芸術活動を展開。観光名所「おかげ横丁」や世界遺産「熊野古道」などのロゴを制作。伝統書道篆刻に加え、新しい文字アートのジャンル「印風画」「かな篆刻」「石垣篆書」を開拓し国内外の芸術界の注目を集め、篆刻芸術の国際的な交流と発展に貢献している。
著書に『高潤生現代印作』、『かな篆刻』など。<近年の主な芸術活動>
(中略)
こちらは、在廊されている高さんが丁寧に説明されている様子をパチリ、パチリ。
会場をメインからサブへ移ると・・・
こちらの作品も私のお気に入り。
伊勢和紙ギャラリー(メイン・サブ・エントランス)を後にすると同じ敷地内にある伊勢和紙館の2階へ移動した。こちらは初めて訪れた部屋だった。
部屋の壁には軸が掛けられ、中央には食卓日記なる かな篆刻 による冊子が展開されていた。
篆刻にて「コーヒ」「食パン」「ヨーグルト」「みかん」、なんとも不思議な日記だ。読み込んでしまう。
高潤生さんの素晴らしい個展、また訪れたい。
できれば高潤生さんが在廊の日に説明を受けながら・・・
説明を聞けば聞くほど作品が自分自身に染みこんでくれるから。
いつ来れるだろうか?
最後に、伊勢和紙ギャラリーの展示はアタリしか無い。私が体感した過去の記録はこちら。
【伊勢和紙ギャラリーにて以前に体感した企画展ほか】
- 参宮ブランド擬革紙の会による『擬革紙の復興 和紙にあそぶ』(伊勢和紙ギャラリー) 2017年01月29日
- 第五回 伊勢和紙プリントの会作品展とギャラリートーク(伊勢和紙ギャラリー) 2016年10月08日
- 金森正巳作品展再訪、大豊和紙工業の三輪神社参拝 2016年05月28日
- 涸沢・上高地 伊勢和紙に描く 金森正巳作品展(伊勢和紙ギャラリー) 2016年05月21日
- 伊勢和紙による三輪薫「仏蘭西・巴里」とフォトワークショップ「風」写真展(伊勢和紙ギャラリー) 2016年02月27日
- 高潤生 個展「養怡(ようい)- なごむ心を養う -」(伊勢和紙ギャラリー) 2015年06月13日
- 有田善男写真展 一孔之彩(伊勢和紙ギャラリー) 2015年04月18日
- 戸川覚写真展「阿仁根子」(伊勢和紙ギャラリー) 2015年03月14日
- 「やさしさ」 伊勢和紙による写真と書の展示 (写真:久保圭一、書:久保丈二)の回想 2014年08月10日
- 伊勢和紙による 篠原 龍 写真展「霊場熊野」(伊勢和紙ギャラリー) 2014年05月17日
- 『四重奏 艸・想・爽・創』 四人展(伊勢和紙ギャラリー) 2014年03月29日
- 伊勢和紙館、伊勢和紙ギャラリー(大豊和紙工業) 2011年10月29日
など・・・
【お詫び】 2017-06-03
コメントにてご指摘いただきました誤植等を修正しました。名称の誤記、大変失礼いたしました。
拝見いたしました。ありがとうございました。
しかし、次の二か所に誤植があります。
人に悲歓(「観」ではない)離合あり、月に陰晴(「図」という字はなし)圓缺あり」
四季(「しこ」ではない)の美しいアートシーン、
訂正していただければ嬉しいです。
匿名 様
誤植のご指摘、ありがとうございます。
早速、訂正させていただきました。
大変失礼しました。謹んでお詫び申し上げます。