2016年04月16日(土) デービッド・アトキンソンさんの講演を聴きたくて参加した第3回伊勢志摩サミットフォーラム (車、徒歩)
5月26日、27日には伊勢志摩サミットが開催される。それに向けて様々な取り組みが進められているがサミット後にはどうなるのか? 例えば、「おもてなし大作戦」と称する「クリーンアップ作戦」や「花いっぱい作戦」、これらはサミット終了後にどうなるのだろうか? 継続されるのだろうか、それともサミットが終了すればこれらの活動も忘れ去られるのだろうか?
本来であれば平常状況でサミットを受け入れる(体制が出来上がっている)のが理想だろう。特別なことはしなくてもいいのではないか、取り繕ってもボロが出るばかりだ。特別ではなくそれを当たり前にできれば別の話なのだが・・・
このように「サミット」という言葉に踊らされている感が強くて、なかなかこれらの取り組みには参加できないでいた。
しかし、今回はデービッド・アトキンソンさんが『英国人アナリスト、三重の未来を語る』と題して講演された「第3回伊勢志摩サミットフォーラム」に参加してしまった。
フォーラム開催日は「県民の日」で三重県総合文化センターには多数の鯉のぼりが飾られ、親子連れで賑わっていた。
会場である中ホールへ入るとほぼ満席の状態。
第3回伊勢志摩サミットフォーラムは熊本地震で命を落とされた方々への黙祷で開始された。知事の挨拶に続き、外務省の溝渕将史さんによりサミットの意義や伊勢志摩サミットの概要が解説された。
以上が終了すると、私にとっては待望のデービッド・アトキンソンさんの講演『英国人アナリスト、三重の未来を語る』が開始された。
彼は日本の文化財行政や観光行政について(行政にとっては)画期的な提案を展開している。その詳細については彼の書籍に紹介されているので、
ここでは本講演で特に印象に残ったことのみを紹介する。
【印象に残った点 1 】
日本人が外国人旅行者に対してアピールポイントと考えている3点「オモテナシ」「治安の良さ」「交通ダイヤの正確さ」は、外国人旅行者にとって全く意味の無いものだった。
ある調査によれば、外国人旅行者数と「オモテナシ」の相関関係はなく、旅行者は「オモテナシ」を期待していない。「オモテナシ」が重要と考えるのは日本人の勝手な思い込みで、インバウンドにはまったく効果がない。つまり、外国人旅行者に対してはひとりよがりの無駄な行為である。
また、治安の良さをアピールしても、治安の悪い国の人達はあえて海外へ出ることがない。つまり、治安の良さをアピールしても意味がない。
さらに、交通ダイヤの正確さも・・・
つまり、日本人は的外れな行動をとっていると・・・。
まぁ、日本人にとっては「オモテナシ」は効果的なのかも知れないが、「オモテナシ」とはアピールするものではなく、自然となにげにできている当たり前のものだから、声高に「オモテナシ」と主張するのには私も違和感を感じてしまう。
【印象に残った点 2 】
サミットを開催しても(何もせずに発信するだけでは)観光客が増えることは無い。磨いて発信しないと効果が出ない。例えば、ロンドンオリンピックではさまざまな点で磨きに磨いたからこそ、オリンピック終了後の観光客が増加に転じた。特に、報道関係者へのアピールは強力だった。
このように変化することは重要だが、一時的ではなく継続することが重要である。つまり、サミットは機会であり通過点、その先をいかに見据えるかが重要だ!
なお、ロンドンオリンピックの取り組みについてはこんなレポートが発表されていた。
【参考】
- 2012年ロンドンオリンピック・レガシーの概要
Clair Report No.402(Oct 2,2014)
(一財)自治体国際化協会 ロンドン事務所
【印象に残った点 3 】
さまざまな点で多様性が必要である。例えば、文化財の説明に関しても、(1)音声のみの一方通行の解説、(2)ガイドによる双方向の解説、(3)専門家による奥の深い解説など、見物者や見学者、訪れる人々の要求レベルに対応できる多様性があればさまざまな来訪者を満足させることができる。これはホテルのランクについても言えること・・・
【印象に残った点 4 】
奈良県の観光戦略に携わっているが、問題は便利が良すぎる近鉄だ。夜遅くまで走っているため奈良に宿泊する観光客が少ない。そのため、春日大社の宮司に依頼して近鉄の始発前に始まるイベントを実施している。つまり、奈良での前泊が参加の前提となるから・・・
【印象に残った点 5 】
日本から発信される情報は90%が文化や歴史に関するものである。しかし、日本を旅する外国人旅行者が常に神社仏閣を巡っているわけではなく、時には美味しい食事などさまざまな情報が必要とされる。
また、「さくら」に関する情報も多いが、さくらは咲いても一週間、またいつ咲くかも確定的ではない、さらにこの花見シーズンは旅館や列車も混雑し、料金も高い。こんな状態の日本を訪れた旅行者は満足できるだろうか?
【今回のポイント】
磨いて発信
やるか、やらないか
デービッド・アトキンソンさんの講演が終了すると休憩の後にトークセッションが開催された。
今回のトークセッションの様子は、三重テレビで5月3日に放送されるとのこと。
【参考】
詳細についてはこの番組に譲るとして、私が印象に残ったキーワードはこちら、
多様性
継続
そして、トークセッションが終了すると 伊勢志摩サミット公認サポーターである歌手 平井堅さんが登場し、鈴木知事とクロストークの後、制作中であるサミットの応援ソング「Time」のデモテープが披露された。
なかなかいい曲だったが、サミット開催の前日である5月25日のリリースとのこと。サミット応援ソングとしては今にでもリリースして欲しいものだが・・・タイミングの悪い「Time」とならないことを願う。
「Time」の感動を胸に中ホールを後にすると外では鯉のぼりが元気に空を泳いでいた。
また、あんなところには月も顔をのぞかせていた。
サミットが一過的なお祭りで終わらないように、心したいものだ。
【 20160416 の記録 】
- 半年がかりでやっとお参りできた明神社(津市芸濃町楠原)
- 石山観音(津市芸濃町楠原)
- 県民の日なのに・・・(MieMu 三重県総合博物館)
- デービッド・アトキンソンさんの講演を聴きたくて参加した第3回伊勢志摩サミットフォーラム