2017年02月11日(土) 棚橋御頭神事(度会町棚橋) (車、徒歩)
以前にも別の記事で紹介したことがあるが、度会町下久具と棚橋の獅子頭には次のような言い伝えがある。
むかし、度会町の田間に夫婦の獅子がありましたが、ある時洪水が起こって雌獅子は宮川沿いの下久具に、雄獅子は棚橋に流れ着き、離ればなれになってしまいました。
雌獅子は「オサキ」、雄獅子は「ダイジョウ」と呼ばれ、毎年1月12日に近い土曜日に行われる棚橋御頭神事では、雄獅子「ダイジョウ」が川向かいの「オサキ」を慕って「ドンドン サキヨ」と呼びます。
この獅子頭は漆塗りの立派なもので、江戸時代中期ごろにつくられたと考えられています。この棚橋御頭神事は、昭和43年に県の無形民俗文化財に指定されました。【引用】 宮川流域ルネッサンス協議会:昔話4~離ればなれになった獅子頭~ より
下久具と棚橋の獅子が雌雄をなすためだろうか、下久具の御頭神事の翌週に棚橋の御頭神事が執り行わえる。一度だけ棚橋御頭神事を拝観したことがあるが、あれは雪の日で昼間の舞のみだった。
【参考】
- 棚橋の御頭神事(度会町) 動画あり 2014年02月08日
棚橋コミュニティセンターでは朝から獅子舞が繰り広げられるが、夜になると舞台は建物の前へと変わり、さらにその後は各所を巡回し、最後には芋納めとなる。
各所の巡回も魅力的だし、芋なるものを納める場面にも立ち会いたいと思っていて時間が経っていた。しかし、次のツアーに参加して御頭神事芋納所(三重県立度会特別支援学校付近)や夜の巡回先を訪れたことがあったのでその機会を待っていた。
【参考】
- 宮川流域案内人の知人が立ち上げた「わたらいツーリズム」の下見ツアー 2016年08月11日
すると御頭神事の前日、京都の友人が御頭神事を体感するために棚橋を訪れることを知った。独りだとなかなか深夜までの神事に足を運ぶ気力が出ていなかったが、二人なら気力が萎えることもないだろう。彼女の来訪にエネルギーを得て私も棚橋へ向った。
私が棚橋コミュニティセンターに到着した頃には室内での舞は終わり、そろそろ庭へ出る状況となっていた。空には円い月が浮かんでいた。
しばらく待機していると
幕が開かれて獅子が飛び出ると舞が開始された。
前回に観た通り、天狗に先導(煽動)された激しい動きの舞だ。
激しい舞を終えると
隣の敷地の隅に用意されたテントへ向った。こちらでの待機(休憩?)と広場での舞が何度も繰り返された。
獅子が不在の広場では、天狗に煽動された子どもたちが肩を組んで広場を走り抜ける。参加型の神事でとても面白い。子どもたちの元気は声が木霊する。
獅子が不在の際、コミュニティセンターの中へ入ると二見興玉神社で授与されるお清めのための無垢鹽草を見かけた。
これは時々見かけるものだ。同夜に斎行されている高向大社の御頭神事でも見かけたことがある。
【参考】
- 高向大社の二見浦禊齋 無垢鹽草(伊勢市御薗町) 2013年01月27日
広場での舞は・・・
獅子が横たわると
天狗の口上(?)と扇子での頭打ちが続けられた。
観客との一体感、楽しい一時!
【動画】 4分02秒( 8.0 MB )
楽しい一時の後は終盤の極みとなった。
【動画】 5分23秒( 10.8 MB )
さらに激しい舞を終えると広場での舞は終了となった。
この後、禰宜家(公民館、コミュニティセンター) → 内城田神社 → 蓮華寺 → 古踊り場 → 法光寺 → 天王さん を巡回し、芋納めで終了となる。
その準備が進められるなか建物の中に入るとその奥には
神と崇められるフルドウサン。舞に使用されている獅子頭は江戸時代末頃に作られ、ダイジョウと呼ばれている。この獅子頭はさらに古いものと思われる。
フルドウサンへの挨拶を終えると再び外へ出た。すると巡回が開始された。
獅子とともに多くの拝観者がその後に続いた。
普段なら見ることのない数の人々が暗い通りへと吸い込まれていった。
そして、最初にたどり着いたのは
内城田神社。
参道の鳥居をくぐり抜けて
拝殿へ向かうと
しばしこの場で待機。
しばらくして動き出したダイジョウは参道を戻ると宮川方向に歯噛みした。対岸下久具の雌獅子である「オサキ」に挨拶したのだろう。
再び参道を進み
拝殿へ戻ると獅子舞が奉納された。途中で照明が落とされると
舞は一段と激しさを増した。
内城田神社での奉納を終えると
社務所前、
続いては蓮華寺の山門をくぐった。
寺務所前、
さらには本堂の前にて。
続いての移動先は
「古踊り場 棚橋区」石柱が建つ古踊り場だった。
右端に見えるのはその石柱。
古踊り場を後にすると
この広場を右に見ながら、さらには背にして
法光寺へ向かいその境内の隅にあり、獅子頭を保管する大上殿へ向った。
続いては、大悲山 法光寺の本堂前、
さらには薬師堂にて。
薬師堂を後にすると階段下の広場にて。
さらに来た道をコミュニティセンター方向へ戻るとその途中にまつられている天王さん、
その向かい。
後は只管に御頭神事芋納所を目指した。
そしてたどり着いたのが
こちら御頭神事芋納所だった。珍しい風習だが御頭が町内を巡って悪を集めた芋(径10cm、長さ20cmほどの柳の木で作った膨らみのある円錐形で、桑の小枝で作った鍬が添えられる。五穀豊穣を願うとも・・・)なるモノに詰めるとかつては地区の境界であったこちら場所に納めることになる。この場所は刑場だったとも・・・
芋納めを終えると参加者はコミュニティセンターへ戻り、御頭神事は終了とある。今回は0時半頃の終了だったが、以前は午前3時など延々と続けられていたそうだ。
この時間までダイジョウに同行した子どもたちには御礼の品と金一封が手渡された。
そして最後に私達も棚橋コミュニティセンターを後にした。
目覚めると昨夜に手渡された鏡餅とおひねりが・・・
素晴らしい御頭神事だった。
これも友人のおかげだ。(感謝)